このノートでは下肢の筋肉の層と形の関係を記録します。上肢と同じく内容が多いため、このノートも随時更新し、図も描き直す可能性があります。
上肢を貫く考え方は回旋でした。橈骨が尺骨のまわりを回り、それにつれて腕全体の形が変わる。下肢にその自由度はありません。下肢を貫く考え方は荷重を支えることです。この違いが両者の形の論理をまったく別のものにしています。腕の筋肉は可動性のために細長く、脚の筋肉は支持のために太く、そして脚にはそのまま適用できる非常に固定的な法則があります。
寛骨 - 大腿骨 - [脛骨・腓骨]の軸
まず骨格から。
骨盤が下肢の起点です。描くうえで重要なランドマークは三つ。
- 上前腸骨棘(ASIS):腰の両脇で触れる二つの突起。骨盤がどちらを向いているかを示すもっとも信頼できる指標です。胴体と脚のつなぎを描くときは、まずこの二点を置きます。
- 腸骨稜:ASIS から後上方へ回り込む弧。腰の形の上限になります。
- 大転子:大腿骨上端の外側にある大きな隆起。体表では股関節部のもっとも幅の広い点として現れます。おおよそ恥骨と同じ高さにあります。
大腿骨は人体で最も長い骨です。重要なのは、それが垂直ではないことです。骨頭はかなり内側にある寛骨臼に収まり、骨幹は外下方へ向かって膝まで走ります。正面から見ると二本の大腿骨は逆 V 字を作ります。女性は骨盤が広いためこの角度が大きくなります。男女の脚を描き分けるときのもっとも本質的な違いは、脚の太さではなく大腿骨の傾きです。
脛骨と腓骨:下腿の二本の骨。脛骨は太く内側にあり荷重を支え、腓骨は細く外側にあり、ほとんど荷重を担わず主に筋肉の付着点を提供します。橈骨・尺骨とはまったく異なり、交差も回旋もしません。
下腿にはきわめて有用な法則があります。内果は高く、外果は低い。 内果は脛骨の下端、外果は腓骨の下端で、腓骨のほうが長く伸びるため外側のくるぶしが低くなります。膝でも同じことが起こり、内側の大腿骨顆は外側より低い位置にあります。つまり脚全体を通じて、内側と外側は互いにずれています。このずれを表せば、脚は途端に硬さを失います。
大殿筋
大殿筋は人体でもっとも厚い筋肉です。
起始:腸骨後部、仙骨、尾骨 停止:大腿骨後面の殿筋粗面、および腸脛靱帯
描くときの注意点。
- 大殿筋の下縁は、臀部の下縁ではありません。 下にある横のしわは皮膚と脂肪が作るもので、筋肉の実際の下縁は内下方から外上方へ走る斜線であり、しわより急な角度です。水平線として描くと臀部はレンガ二つになります。
- 上外側と中殿筋のあいだにはくぼみがあります。骨盤側面でもっとも重要な構造です。
- 線維の多くは大腿骨ではなく腸脛靱帯に停止します。つまり大殿筋は膝関節の安定にも関与しています。
中殿筋
中殿筋は大殿筋の前上方にあり、体表では腸骨稜と大転子のあいだの塊として現れます。
これが股関節部の幅を決めます。片脚で立つとき、反対側の中殿筋が収縮して骨盤を水平に保ちます。立位のポーズでもっとも重要な力学関係であり、ここが正しく描けて初めて人物は本当に立ちます。弛緩した側の骨盤はわずかに下がり、コントラポストが生まれます。
大腿:四つの群
大腿の筋肉は大腿骨のまわりに配置された四つの機能群に分かれます。一つずつ覚えるより、この分け方のほうがはるかに役立ちます。
前群:大腿四頭筋
四つ。大腿直筋(中央、股関節をまたぐ唯一の筋)、外側広筋、内側広筋、中間広筋(深層で見えない)。
体表では、
- 見える三つは膝の上で膝蓋骨へ収束し、膝蓋靱帯を介して脛骨粗面へつながります。
- 内側広筋は外側広筋より明らかに低く終わり、ほとんど膝の上まで下りてきます。大腿でもっとも見分けやすい法則であり、脚が正しく描けているかを確かめる鍵です。左右対称に描くと、脚はその特徴を失います。
- 外側広筋は上半を腸脛靱帯に覆われるため、体表の隆起は筋肉そのものより低い位置に現れます。
後群:ハムストリング
三つ。大腿二頭筋(外側)、半腱様筋と半膜様筋(内側)。
坐骨結節から出て内外二束に分かれ、膝の後ろを通ってそれぞれ脛骨と腓骨へ向かいます。膝の裏のひし形のくぼみ(膝窩)は、この二束と下の腓腹筋に囲まれてできています。 膝を曲げると両側の腱が二本の索としてはっきり張り出します。座位やしゃがみのポーズでは必ず描くべき構造です。
内側群:内転筋群
恥骨筋、長内転筋、大内転筋、薄筋など。恥骨から起こり、大腿骨の内側に停止します。
描くうえでは、この群は恥骨から下外方へ広がる一枚の三角の面としてまとめられます。細分しても得るものは少ないですが、この面があるおかげで大腿内側は直線ではなく、上が広く下が狭い移行になります。
外側:腸脛靱帯
厳密には筋肉ではなく、腸骨稜から脛骨外側まで下る厚い腱膜です。
これが大腿外側の輪郭を決めます。大殿筋の一部と大腿筋膜張筋がここに停止し、張ると大腿外側は直線、ときにわずかに凹んだ縁を見せます。アスリートの大腿外側がしばしば外へ膨らんだ弧ではなく中央が平らに見えるのはこのためです。初学者は大腿外側を豊かな弧として描きがちで、これは非常によくある誤りです。
下腿
腓腹筋
下腿後面でもっとも目立つ筋肉で、二つの頭がいずれも大腿骨下端から起こり、アキレス腱へ合流します。
大腿と同じ法則に従います。内側頭は外側頭より低く、大きい。 後ろから見ると、ふくらはぎの内外の輪郭はずれています。内側の隆起が低く、外側が高い。この法則と、大腿の内側広筋、そして内外のくるぶしの高低は同じ体系に属し、合わさって脚全体のジグザグのリズムを作ります。
脚を描くうえでもっとも有用な経験則が、この交互のリズムです。 大腿外側が高い(腸脛靱帯・外側広筋)→ 大腿内側が低い(内側広筋)→ 下腿外側が高い → 下腿内側が低い → 内果が高く外果が低い。脚は交互に並ぶ弧の連なりであって、二本の平行線ではありません。
ヒラメ筋
腓腹筋の下にあり、体表ではその両脇にのみ現れます。腓腹筋より幅が広いため、ふくらはぎのもっとも太い部分は実際には両者が重なった結果です。側面から見ると、腓腹筋の外縁の下からヒラメ筋が帯として覗きます。
前脛骨筋
下腿の前外側にあります。脛骨の前縁は皮膚のすぐ下にある点に注意してください。いわゆる弁慶の泣きどころで、触れば硬い骨です。したがって下腿の前面は中央の隆起ではなく、鋭い骨の縁がやや内側に、筋肉の隆起がその外側に、という構成になります。ここを誤ると下腿は円柱になってしまいます。
アキレス腱
ふくらはぎの下から細まり、踵骨に停止します。全身でもっとも太い腱で体表にはっきり現れ、側面から見るとふくらはぎから足首へ急激に細くなる線になります。
その両側にはくぼみがあり、この二つのくぼみと内外果の高さの差が、足首の構造のすべてです。
まとめ
下肢は三つの法則に圧縮できます。
- 大腿骨は斜めである。 外側の股関節から内下方へ膝まで走り、男女で角度が異なる。
- 内と外はずれている。 大腿内側が低く、下腿内側が低く、内果が高い。脚は交互の弧の連なり。
- 外側は平らである。 腸脛靱帯が大腿外側を直線に近づける。豊かな弧として描かないこと。
この三つを正しく取れば、脚は体積と重さを得ます。このシリーズでは今後、頭頸部と手足も扱う予定です。